スニーカー事件

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スニーカー事件

「酒のペース早いなぁ…機嫌も悪そうやけど、どうした?また例の女か?(笑)」次の酒を作ってカウンターに出してやると若にゃんは反撃するような気力もなさそうに俺を見て、深いため息をついた。 またいつもの恋わずらいですか…夏風物語でも、ちょいちょい出てくるオバハンの恋わずらいモード。だけど、いつもより深刻そうだ…まぁ、俺には関係のない他人事な話。悩めるだけ幸せじゃないかと毎度のこと思う。 あの夏からアカリ姫にも出会えず、何もない俺…今度は店に来てくれるという約束は、どこへやら… 「この前…お泊まりに行った時に、見ちゃったんだよね…スニーカー。しかもリメイクというか加工し途中のやつでさ…」オバハンは呟いた。 「スニーカー?良かったやん♪楽しみじゃん?先に見ちゃったってだけ?」それの何の問題があるのか、何のことやら理解できずに俺は答えた。 「例の女がさ、もうすぐ誕生日なんだけどね…もしかしたら、それってプレゼントなんかなって…だって、それ…私のサイズと少し違ったんだよね…」なんだか泣きそうな若にゃん。やめてくれ…今日は久しぶりに酔っぱらって泣く日なのか!?まぁ、客も来そうにないから良いけど…久しぶりに面倒くさいオバハンになってしまう…そう思いつつも、他人のハプニングは気になるものだ。 オバハンは、なんとも次から次へと不敏なやつだ…あんなにラブラブだったかと見せつけられては、ケンカしただの…二股だの…だけど、いつもの事だし気にしなくてもオバハンは元気になるはずだと思った。昼間のテレビを見て、芸能人のスキャンダルやらゴシップを見てしまうような感覚。 それなのに、勢いがない…強めの酒を出しても酔っぱらう気配もない。あげくに、会いたいけど…会いたくないなんて愚痴をこぼしている。 俺なんて、アカリ姫からLINEは来るものの…デートの誘いは連敗中だというのに… 会社の飲み会があって…車が故障中で…弟が入院してて…なんだかんだ理由は、いろいろありつつ惨敗。 周りにも脈はないだの、嘘つかれてるだのと言われてるが…俺はアカリ姫を信じている。 会いたいけど…会いたくないなんて、俺には理解できない。会えるもんなら会いたいもんだ…嘘つかれてても返信があるだけ良い。俺なんて、LINEの返事がすぐ来なかったり…日付をまたいで話題を変えられたりだし… 露骨に若にゃんのダーツにも影響は出ていた。気持ちが入ってないダーツは、狙った的に届かず…気を紛らわせたいのに集中できてない…信じたいのに信じられない現状が、明らかにダーツにも出ていた。
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