「真実」と「成長」に向かって・・・

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小学校の入学式には、お父さんが来てくれた。でも、お母さんは来てくれなかった。 周りの皆にはお母さんがいるのに、僕だけお母さんがいないのは、ちょっと悲しかった。 皆のお母さんは、綺麗なお化粧をして、綺麗な服を着ていた。あんな服を着ている僕のお母さんも、見たかったな。 でも、その気持ちは誰にも言いたくなかった。何故なら、僕がお母さんの話をすると、皆が悲しい顔をするから。 この前、なかなか寝られなかった僕はお父さんの部屋に行った。でもお父さんは、夜中に一人で泣いていた。 ベッドの上で、写真を握ったまま。お父さんは、お母さんの名前をずっと呼び続けてた。 僕はすぐに自分の部屋に戻って、お口をチャックした。 そして僕は、よく休み時間に図書室に行って、色んな場所の地図を眺めてた。 他の友達は外に遊びに行くけど、僕は一人で地図の本を眺める。本当は皆と一緒に外で遊びたいけど、それよりもやりたい事だった。 幼稚園ではちゃんとした地図は置いてなかったから、小学校に入ったら、まずやろうと思っていた。 お父さんが『あの時』言っていた、お母さんの居る場所。 「遠く」 その場所が全く分からない僕は、とりあえず世界中の地図を見て、お母さんが好きそうな場所を、自由帳にメモしてた。 お花が大好きだったお母さんは、家のお庭でお花を育てるのが大好きだった。 でも、お母さんが家に戻って来なくなってから、お庭はジャングルみたいになっちゃった。 草は生え放題だし、木はボサボサ。時々おじいちゃんやおばあちゃんがお庭を掃除してるだけ。 もうすぐあのお庭は、『こんくりーと』で固めるみたい。僕、本当は嫌だった。でもぐっと我慢したんだ。 だってあのお庭には、お母さんと一緒に埋めたヒマワリとか、お母さんがずっと大切に育てていたお花や木が沢山生きてたのに・・・。 きっとお母さんは、お花が沢山ある場所に居るに違いない。 お母さんが家に帰って来てくれれば、お庭が喜んでくれる。また沢山お花が咲いてくれる。 またお母さんと一緒にお花を育てられる、またお母さんと一緒にご飯を食べられる。 そんな事を初めて、もう小学校生活が終わりを告げようとしていた、小学六年生の冬。 皆が外で雪遊びに没頭する中、俺は温かい図書館の中で、自由帳を眺めていた。 お母さんが行きそうな場所は、ある程度この自由帳にメモした。でもそこに行くには、「お金」が必要だった。
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