「真実」と「成長」に向かって・・・

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小学校を卒業して、中学生になった俺は、自分の部屋のクローゼットから、一つの紙袋を取り出した。 この紙袋は、俺が小学校三年生の時、おばあちゃんから貰った誕生日プレゼントだ。 その中身は、缶の貯金箱。でもまだあの時は貯金してなかったから、俺はとりあえずクローゼットの中に入れておいた。 紙袋の中には、貯金箱と一緒にシールも数枚入っていた。それは、昔俺が好きだった戦隊もののキャラクターシール。 そのシールを見て、俺は思い出した。おばあちゃんがこの貯金箱を俺にくれた時、「これでかっこよくしてね」と言って渡してくれたんだ。 でも俺は、シールだけ紙袋にしまって、紙袋を再びクローゼットの中に入れる。そして俺は筆箱の中からマジックペンを取り出す。 そのマジックペンで、俺は貯金箱にある言葉を書いた。 「『遠く』へ行く為の貯金箱」と。  そして今日から、俺の節約生活が幕を開けた。 まだバイトができない身分、とりあえず今は、お父さんから貰えるお小遣いを少しずつ貯めるしかない。 その為には、まずお小遣いの出費を抑える事。必要のない物は買わない事。物を大切にして、長く使う事。 まず一番出費が多いのは、文房具。俺は家中にある、使われていない文房具をかき集めた。 短くなった鉛筆。もうすぐでインクが切れそうなボールペン。小さくなった消しゴムなど。 あと、近所にある文房具店では、時々文房具のセールを開いている。俺はそのセールの日にしか文房具を買わない事を心に誓う。 テスト勉強に使うノートは、広告やチラシの白紙を使って、とにかく教科書に色々と重要な事を書き残した。 俺がこの前、隣のクラスの生徒に教科書を貸してあげた時。その生徒はかなり驚いたらしい。 あまりにもびっしりと色々な事が書かれている教科書に、驚いたけどすごく助かったそうだ。 俺の教科書は学校中で評判になって、そのおかげでこんな俺にも、友達が沢山できた。 それをお父さんに教えたら、お父さんもすごく喜んでくれた。でも皆と仲良くできたきっかけは、案の定内緒にする。 中学二年生の誕生日になると、お父さんが「プレゼントは『物』じゃなくて、『現金』の方がいいかな?」と言ってきた。 本当は現金の方が良かった。その現金を貯めれば、俺の最終目標が達成できる日が近くなるから。 でも俺はあえて言った。「『物』の方がいい」と。 それは、お父さんに俺の気持ちを悟られないようにする為でもあった。 それに、ゲーム機やスポーツ道具を強請れば、またお父さんと一緒に家族団欒の時間を満喫できるから。 お父さんは成績よりも、俺の体調や心を何よりも気遣ってくれる、自慢の優しいお父さん。 結局俺は自分とお父さん用の野球グローブと、野球ボールを強請った。 俺は野球部どころか、部活にも入っていない。お金がかかるから。でも、毎日デスクに座りっぱなしのお父さんには、体を動かしてもらいたい。 天気が良い日には、一緒にキャッチボールをして遊んだ。大抵お父さんはキャッチできずに公園中をウロウロするけど。
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