Switch

Switch 00

  一秒に一人ずつ世界中の人と会っても、私たち人類の限られた生涯の中では地球上に存在するすべての人間とは会えないという。

  ということは、今、この街のこの交差点をすれ違いざまに歩く人たちとは、少しでも時間がズレるだけですれ違うことすらなかったのかもしれない。

  そう考えると自分を取り巻く環境と、その中で密接に関わる人々はかけがえのない存在ということになる。

  友達、両親、職場の仲間。

  もしかしたら出会わなかったかもしれないたくさんの人と、私たちは仲を深め、寄り添いながら生きている。

  そんな多種多様な人間の中にはたくさんのスイッチが存在する。

  かけがえのない存在に対して抱く、たくさんの感情。

  たとえばそれは、愛情だったり、嫌悪だったり、悪意だったり、善意だったり。

  時として、その愛情が憎しみに。
  憎しみが殺意へ。

  そんな感情が複雑に絡み合う瞬間。

  人はその見えないスイッチを押すのかもしれない……。