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1.カイとゆゆとアニ
ユリウスが寝込んでる。珍しく。十一歳を祝う誕生パーティーの直後に調子が悪くなったから、お菓子の食べ過ぎが原因だろう。と思ってたら、風邪だった。
オレにうつさないようにと、昨日の夜からユリウスは療養室に移された。いつも一緒にいるユリウスが隣にいないと、やけにベッドが広いんだよな。寒いし。
「ゆゆ、具合は? 食欲ないんだって? 必要なものがあるなら、部屋から持ってきてやるぞ」
「んん……クマクマがいるから大丈夫だよ」
オレはベッドに横たわるユリウスの金髪をかき上げ、額に手を当てた。熱いな。茹でた栗並みに。
お気に入りのぬいぐるみを抱きしめたユリウスは、声がかすれてしゃべるのもつらそうだ。食欲の塊であるユリウスがなにも食べないと、さすがに心配になる。
「なんて言ったっけ、ゆゆが好きなお菓子の店」
「レインドロップ……?」
「買ってきてやろうか、飴。喉に良さそうだし、寝ながら舐められるだろ」
「カイ、ほんと? 嬉しい……!」
ユリウスは頬を上気させ、「グミも食べたいな」とカサカサの声でのたまった。
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