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私室に戻ったオレは、ユリウスの希望を叶えるべく、タブレットで「レインドロップ」を検索した。
商品一覧を見るとチョコやクッキーのほかに、ビタミンC入りの飴とグミが売っていた。もうこれに決まりだな。
「殿下、調べ物はけっこうですが、先に部屋を片付けたらいかがです?」
「オレが綺麗にしたら、アニエスの仕事がなくなるだろ。不満ならいつでも辞めていいぞ」
アニエスは五歳年上の十六歳で、オレとユリウスの従者だ。着任して半年、歴代の従者の中では、一番長く仕えてる。これまでの従者と違うのは、忍耐強く意外にしたたかだったりするところだ。
従者のくせに部屋を片付けろなんて注意する無礼なやつは、アニエスの他にいない。わざと散らかしてるのがバレてんのかな。
「アニエス、午後買い物に行くから、車の手配しとけ」
「急には無理ですよ。街へ出るならそれなりの護衛をつけるべきですし、侍従長にも相談しないと」
くそ真面目だな。ちょっと行って帰って来るだけだろ。
「メイドに行かせたらいいでしょう。歴史の授業はどうするおつもりですか。また私が謝りに行くのは嫌ですよ」
アニエスは「また私が」を強調してオレを牽制した。前回さぼって行方をくらましたのを根に持ってやがるな。歴史って眠くなるから嫌いだ。ユリウスもいないんじゃ、じいちゃん家庭教師とふたりきりで息が詰まる。
「オレが選んで買ったものをユリウスに食べさせたいんだよ。協力しないなら、おまえはクビだ」
「殿下を連れ出したのが侍従長にバレたら、どの道私はクビですよ」
「アニエスがクビになる前に、オレが侍従長をクビにするから安心しろ」
納得したのか反論する気がなくなったのか、アニエスは大きく溜息をつき、「仰せのままに」と頷いた。
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