1.カイとゆゆとアニ

2/3
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 私室に戻ったオレは、ユリウスの希望を叶えるべく、タブレットで「レインドロップ」を検索した。  商品一覧を見るとチョコやクッキーのほかに、ビタミンC入りの飴とグミが売っていた。もうこれに決まりだな。 「殿下、調べ物はけっこうですが、先に部屋を片付けたらいかがです?」 「オレが綺麗にしたら、アニエスの仕事がなくなるだろ。不満ならいつでも辞めていいぞ」  アニエスは五歳年上の十六歳で、オレとユリウスの従者だ。着任して半年、歴代の従者の中では、一番長く仕えてる。これまでの従者と違うのは、忍耐強く意外にしたたかだったりするところだ。  従者のくせに部屋を片付けろなんて注意する無礼なやつは、アニエスの他にいない。わざと散らかしてるのがバレてんのかな。 「アニエス、午後買い物に行くから、車の手配しとけ」 「急には無理ですよ。街へ出るならそれなりの護衛をつけるべきですし、侍従長にも相談しないと」  くそ真面目だな。ちょっと行って帰って来るだけだろ。 「メイドに行かせたらいいでしょう。歴史の授業はどうするおつもりですか。また私が謝りに行くのは嫌ですよ」  アニエスは「また私が」を強調してオレを牽制した。前回さぼって行方をくらましたのを根に持ってやがるな。歴史って眠くなるから嫌いだ。ユリウスもいないんじゃ、じいちゃん家庭教師とふたりきりで息が詰まる。 「オレが選んで買ったものをユリウスに食べさせたいんだよ。協力しないなら、おまえはクビだ」 「殿下を連れ出したのが侍従長にバレたら、どの道私はクビですよ」 「アニエスがクビになる前に、オレが侍従長をクビにするから安心しろ」  納得したのか反論する気がなくなったのか、アニエスは大きく溜息をつき、「仰せのままに」と頷いた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!