1.カイとゆゆとアニ

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***  アニエスと次席執事、「それなりの護衛」付きで、無事買い物を済ませたオレは、ほくほくの気分で帰途に着いた。  母さまの分も買ったから、あとで部屋に届けよう。車はもうすぐアストラ王宮に到着する。 「ありがとな、アニエス。助かった。これ、おまえの」  オレはアニエス用に選んだグミの小袋を手渡した。レインドロップのお菓子は、やたらとファンシーで、どれもこれもパステルカラーのリボンが結ばれている。店自体も可愛くて、女の子のお客さんがたくさんいた。 「青りんご味……? 私にも買ってくださったんですか」 「アニエスの目は綺麗な緑色だから、同じ色のグミを選んだんだ。グミが嫌なら飴もあるけど?」 「ありがとうございます。こちらのグミでけっこうです」  駄菓子なんかいらないって断られなくて良かった。アニエスはオレの前ではだいたい無表情か眉をしかめてることが多い。いまは微かだけど、笑顔な気がする。グミ、好きなのかもな。  オレはユリウスの喜ぶ顔が見たくて、王宮のロータリーに到着するなり、車を飛び降りた。  できるだけ脚に負担をかけないように療養室に急ぐ。変装のために着込んだコートと帽子が重い。
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