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2.北風と太陽
「ゆゆ、買ってきたぞ」
「おかえりなさいませ、カイ様」
扉を開けると、メイドのミーシャがユリウスに薬を飲ませていた。今日も笑顔がキュートだな。頬と体が熱くなったのは、ちょっと急ぎすぎたせいだ。
「クロゼットにしまっておきますね」
薬を飲ませ終えたミーシャは、オレの帽子とコートを受け取って席を外した。あとでミーシャにも一個あげよう。まずは、ユリウスに食べさせてからだ。
「ほら、飴とグミ。ゆゆが好きそうな味、いろいろ買ってきた」
ベッドに乗っかって紙の手提げを渡すと、ユリウスは体を起こし、パッと顔を輝かせた。
「わあ、ありがと、カイ! たくさんあるね、すごく嬉しい」
「全部いっぺんに食うなよ」
ユリウスは朝と同じカサカサの声だったけど、それほど苦しそうな感じはなかった。少しは熱が下がったのかも。
「これ新発売のグミ? 開けていい?」
「全部ゆゆのだから、好きにしな。あ、ひとつはミーシャに残しといて」
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