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学校には常駐の校医がいる。
元々はどこかの大病院でバリバリ働いていたという噂もあるが、校医の橘先生はのんびりした感じでいつも眠そうだ。
「先生、雅美が具合悪そうなんで診てください」
「おや、八代君。喘息かい?」
生徒の健康データが予めあるにしても、入学したばかりの雅美が喘息持ちだとちゃんと分かっている点からもやはりできる医者なのかもしれない。
「喘息……じゃなくて、ちょっと胸がちくちく痛くて…。少し良くなってきました」
そう言う雅美の顔は真っ青で冷や汗もかいているようだ。
「今まで心臓の病気って言われたことあるかい?」
「ないです……。たまに、ドキドキしてたけど、恋の病かと………」
息切れしながら必死に言葉を紡ぐ雅美が、恋の病などと言うので思わず橘は笑ってしまった。
「ちょっと診てみようね。一条君、空いてるベッドに彼を寝かせてくれるかい?」
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