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「ハルちゃんに気に入られなくて許嫁の話が白紙になったらごめんね」
僕の家の会社とハルちゃんの家の会社が、僕たちの結婚で合体して大きくなる予定だけど……結婚がもし無くなったら…………。
「雅美はそんなこと気にしなくていいわよ。でも、ハルちゃんと幸せになってくれたら嬉しいわ」
お母さんはそう言うと僕の頭をよしよしと撫でてくれた。
明日からは寮に入るので、お母さんとも暫くお別れだと思うと寂しい気持ちになる。
家族の仲は良かったので、この居心地のいい家を出て寮に入るのは不安でたまらなかった。
「ハルちゃんもこんな気持ちなのかな…」
もう何度も見たハルちゃんの写真を僕はスーツケースから取り出した。
切れ長な目をしたおかっぱ頭の少女が写っている。カメラを見る眼差しはとても力強くて小学生には見えない。
「本当に美人だなぁ……」
この真っ直ぐな眼差しに心を射抜かれて、僕は写真のハルちゃんに昔から恋をしていた。
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