君の笑顔

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「ねえ……昔僕に会ったって言ってたよね?」 「うん。退屈なパーティーを抜け出して俺は中庭にいたんだ…………」 俺は冷めた子どもだった。 一条の家に生まれて、一条の為に生きるのだと言われて。 結婚相手も勝手に決められていた。 渡された写真を見れば、とても可愛い子が写っていたが男の子だと言う。 それでも家が決めたことだ。 俺が何を言おうともう決まっているんだ。 俺は自分の意思で何も決められない。 欲しいものも与えられるもの以外は、自分の力で手に入れることはできないんだ。 それでいいと思っていた。 仕方ないと。 何かを望むなどばからしいと。 あの日のパーティーも本当は出たくなかった。大人ばかりで退屈だったし。 親に連れてこられて仕方なく会場にいたけど、あの日は何故か抜け出してみたくなったんだ。
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