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欲しいものだって手に入らないんだ。
ほら、あの星が手に届かないように絶対に無理なんだ。
空を指して言った。
彼が答えに困るだろうとわかっていたのに。
『なんだ。そんなことか』
僕の予想に反して彼は嬉しそうに笑って自分のポケットを漁り始めた。
『はいこれ。さっき拾った星のかけらだよ。他に欲しいものがあったら拾ってきてあげる』
手の平に載せられたのはきらきらと輝く小石だった。
ただの石じゃないかとは言えなかった。
彼が本当にそれを星のかけらだと思っている様子だったから。
『宝ものにしようと思ったけど、君が持ってた方が良さそうだから』
天使のように微笑んで彼はその石を俺の手に握らせてくれた。
その手がものすごく温かくて…優しくて。
この子が欲しい。
初めて『欲しい』という感情を覚えた。
この子ともっと一緒にいたい。
もっと笑顔を見ていたいと。
「で、爺さんに絶対に雅美と結婚したい!って言いに行ったんだ」
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