大事なもの

3/25
前へ
/270ページ
次へ
「……み。雅美…………」 ハル君の声がする。 ぼんやりした頭で目を開けると、僕を心配そうに覗き込むハル君と目が合った。 「雅美、大丈夫?熱は下がったみたいだけど……」 「ハル君、もしかしてずっと付いててくれたの?」 ハル君は柔らかい笑顔でそんなこと気にしなくていいと、僕の頭を撫でてくれた。 相変わらずの綺麗な笑顔だけど少しだけ疲れた感じで……ずっと看病してくれていんだと思うと胸がきゅっとした。 「もう大丈夫。たまに熱が出るんだ…でも薬ですぐに下がるから」 「無理しちゃダメだよ。昨日もっと俺が気をつけていればよかった…」 申し訳なさそうに僕の手を握るハル君に、逆に申し訳ない気持ちになる。 勝手に濡れて勝手に熱を出したのは僕なのに。 ハル君は全然悪くないのに……むしろ看病してもらって迷惑かけたのに。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3137人が本棚に入れています
本棚に追加