ひたすら忍耐の日々が続きます。

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ひたすら忍耐の日々が続きます。

 こんな肉の塊に育った巨体から開放されるには、ひたすら忍耐という二文字しか浮かんでこない地獄のような…。 そんな過酷なダイエットの日々が…私には、待ち受けていたのです。 唯一の救いは、母親が試行錯誤してヘルシーメニューを考えてくれたおかげで…低糖質、低カロリーの手作りお菓子を色々食べることが出来たことね。 そんな救いでも無ければ、こんな過酷なダイエットを続けることなんて出来るわけないじゃない! まだまだ、こんなキッツーい日々が続くと思うと…ほんと、げんなりしちゃうけどね。 *************  それでも…ダイエットを始めてから2ヶ月が過ぎた頃には、約15キロの減量に成功していた。相変わらず…魔王は、どこから仕入れてくるのか? 色々な怪しいダイエット法を、人体実験でも楽しんでいるかの様に私にやらせて楽しんでいる。 「そろそろ、お灸ってやつをまたやらないとな!」 「え~~~! あれは勘弁して~~~! 熱いなんてもんじゃ無いんだから!!」 私が嫌がっていると、魔王は目尻を上げて私の右頬を掴んで思いっ切りグイグイ引っ張って怒鳴り声を上げていた。 「お前に拒否権はねえって言ってんだろ! 黙ってオレ様の指示に従え!」 「いひゃい~! はにゃしてよ~! あううううう!!」  右頬を思い切り引っ張って離して貰えないので、上手くしゃべる事も出来ず…涙目で魔王に訴えていると、急に何か思い付いたようで…魔王はパッと私の頬から手を離してニヤリと笑ってこう言った。 「そう言えば、スイエイってやつのほうが効き目があるらしいから…これから夕食後は、2時間スイエイだな♪」 「いきなり水泳って? どこで? 夜に水泳なんて…どこでするの?」 魔王は、ニヤニヤ笑っているだけで…どこへ行くのか? いくら聞いても教えてくれなかった。  夕食の後…魔王に連れて来られたのは、どこかの施設のプールで誰も居ない貸し切り状態だった。 拒否権の無い私は、水着に着替えさせられて魔王から2時間ひたすら流れるプールを流れに逆らって歩けと言われて必死で2時間歩いた。普通に歩くよりも、流れるプールの逆を歩くのはかなり体力を消耗するのでいつもより2時間がとても長く感じて、家に帰る頃にはヘトヘトだった。 「これは、本当に効果がありそうだな! あと、ストレッチ5セットも忘れんな!!」 「あうううう~…無理~~…もう~~身体が動かない。活動限界だよ~」 ベットにひれ伏した私を後ろから蹴り上げて、魔王が鬼のような顔をして怒鳴っていたが…更に5セットもストレッチなんて、とてもじゃないけど出来るわけが無かった。 「だったら、動かなくても出来ることをすれば良いんだな? クククッw」 「えっ!?」  ムフムフ笑いながらお灸を取り出した魔王は、私の背中にお灸を4箇所置いて火を付けていた。すぐにストレッチを拒否したことを、私は凄く後悔していた。 「あううううううう~! 熱い! うううううう! あう~!」 「仕方ねえだろ? お前が動けねえんだからさ! クククッw」 こんなことをしている時の魔王は、もの凄く楽しそうで…やっぱり魔王は、すっごいドSなのだと改めて実感させられた。 *****************  翌朝には、それでも…不思議なほどに疲労感が残っていなかった。多分、あの辛いお灸の効果だろう。そして、考え事をしながら朝のウォーキングをしていたら…突然、頭の上にあの魔猫が降って来た。 「お前も意外に頑張るわね。すぐに弱音を吐いて魔王さまに魂を差し出して許しを請うだろうって思って楽しみにず~っと待ってたのにさ! フンッ!!」 「あああ~! またぁ~! 人の頭の上で偉そうに。降りなさいよ!!」 久しぶりに姿を現したかと思ったら、さっそく私に向かって憎まれ口を叩いている魔猫を私は片手で掴んで地面に下ろしてやった。 「ヤレヤレだわ。フンッ! 魔王さまも、ちーっとも魔界へ帰ろうともしにゃいし、魔界は魔界でベルゼブブ様が手の妬ける魔王さまがいにゃくて仕事が凄くはかどる~~♪ 何て言って喜んでるし。面白くにゃいのよ! それもこれも全てお前のせいにゃんだから!」  魔猫ってば…黒猫の姿で私に溜まっていた鬱憤をぶつけるだけぶつけたら、またスッとどこかに消えてしまった。 「何なのよ? 私が悪いの? 魔王が勝手に私にダイエットしろって強制的に居座ったんだから、魔王が悪いんじゃないの? あ、でも、召喚したのは…私だった…(苦笑)」 それより、魔猫はどうしてたんだろう? あれから姿を見せないから、少し心配だったけど…元気そうだったし、魔界にも帰ってるみたいだし心配するだけ無駄だったみたいね。  それでも私は、家に帰ってシャワーをしながら魔王が魔猫にどうしてあんなに冷たいのかが不思議でモヤモヤしていた。 魔界の魔王さまなら、あんなスタイル抜群なお姉さん達を何人もはべらせてムフムフしていても不思議じゃないし…普通の光景よね?…ってこれは私の勝手な妄想だから違うのかな~? でも、何か変よね。案外魔界って面倒臭い所だったりして…。  朝食を済ませて今日は休日だったので、少し休憩してから魔王の指示に従ってもう1時間ウォーキングをしている最中に魔猫を探してみたんだけど…どこにも魔猫の姿は見当たらなかった。 家に帰ってからも、気になって仕方がない私は魔王に魔猫の事を話してみた。 「気にしなくて良いぜ。魔猫は、オレ様が呼べばいつでも姿を現す使い魔だからな! 今は、その必要が無いからアイツは何処かオレ様の声の聞こえる所で潜んでるさ。美乃里が心配することは無い。それよりもストレッチ5セットな!!」 「え~~~! またぁ~? 少し休憩させてよぉ~~!!」 私が魔王の指示に文句をつけたら、魔王は目尻を上げて私のお尻を蹴り上げてから両頬をギュぅっと掴んで上下に引っ張った。 「お前も懲りねえなぁ~! 口答えすんな!っつってんだろ!」 「いひゃい! いひゃい! あううううううう~!!」 ケケケケと魔王は、楽しそうに笑いながら引っ張りあげた手を勢い良く離してまた笑った。 「ひっど~い!」 「ほれ! さっさとやれ! ストレッチ5セット×2な!!」 日に日に魔王のドS度数が上がっているような気がして、私は身の危険を感じていた。 「これじゃ忍耐と苦行の日々だわ。目標体重にはまだまだ程遠いし」 ストレッチを終わらせて洗面所で顔を洗って体重計に乗ってみたら、ダイエットを初めてから17キロ体重は減っていたが目標体重の45キロには程遠い。 ガックリ肩を落として部屋へ帰ると、魔王が私に向かってどこから手に入れたのか? 青いバランスボールを放り投げて来た。 「オイ! それってもう古いらしいけど、室内の運動には良いらしいぞ! テレビ見ながらでも出来るらしいし。ちゃんとやれよ! わかったな!」 「…やらせていただきます。はい♪」 次から次へと良くこんな物を探してくるなと…呆れつつも、私は魔王にされるままにテレビを見ながらバランスボールで運動していた。  目標体重には程遠いけれど…17キロも減量された私の身体は少しずつではあるけど変化していた。 制服も母親がウエスト部分を調整してくれて、ダイエット前よりは女子高生っぽくなっていた。心なしかお肌の調子もスベスベで凄くイイ感じだった。 そしてこんな私に大変な大変な転機が訪れる訳ですが、それは次回のお楽しみです。
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