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廃人はエルフを夢見た
…ここは何処?
澄み渡る青空に鬱蒼とした木々。
人の手が入っていないのかツタが木に巻きつき長い雑草がそこら中に生い茂っている。
"一体これは、"そういいかけたところでふと思い出した。
アレ?なんでこんなところにいるんだっけ。と
結論、何故か目が覚めたら森にいた件。
いつの間にか寝てしまったのだろうか。よくわからないが、青臭い匂いがして変だな?って思って目を開けたら森……と言うか、ジャングルだった…。
自分で言ってみておかし過ぎて笑えてくる。
これはおかしい
同じジャングルと言えど、アパートの3F辺りをコンクリートのジャングルで囲まれた住まい。
文明の利器の溢れた世界だったはず。
なんだこれ。文明のかけらもないぞ?
俺だけタイムトリップしたとか?
そんなアホな。
「ギャギヤアーーー!!!!」
と、そんな思いを裏切るかのように大空に羽ばたくプテラノドンのような生物。
木々の合間から一体だけではなく何十もの巨大生物の影がみえた。見えてしまった。
ジュラシッ○パークやんけ。
開いた口が塞がらない。
混乱とストレスからかクラっと目の前が歪み、膝から崩れて地面に手を落とした。
ちゃぷ
どうやら手をつけた場所は水たまりだったらしい。
茶色く濁った水は、ムカつくくらい晴れ晴れとした青空と人影を映していた。
この茶色で泥だか土だかわからない色をした水……さっきのプテラノドンの小便じゃねぇだろうな?、と思いふと水面に視線を落とすと見慣れない顔があった。
この世のものとは思えないほどに整った顔に、エメラルドグリーンの眼、金色というより艶やかに光るウグイス色の髪の毛。
そして笹状の長い耳。
なんだこいつは。
エ、エフゥウフ!
エルフじゃないですか!エロフ!おふっ!でゅふふ!
もしかして、もしかしなくても。
そんな期待を胸に耳に手を伸ばして見ればーーっ!?
エルフの正体は俺だったようだ。
エルフかー。
エルフね……ん?
何故にエルフ?!
俺ってばこんなイケメンだったとはな。
あー、すっかり忘れていたようだなー(棒
僕は夢をみていたんだーコンクリートジャンルと社会という人生の牢獄で覆われた世界なんてあるわけないじゃないか!
人間なんて言う下等生物になる夢なんてみてー。や、やだなぁー。生まれも育ちもエルフじゃないかー。
あは、あはははははは
現実逃避もくれくらいにして。
って何だこれ!
まださ!突然森にいたのは許せる…
何故にエルフ!!!!
いや、言わずともわかってるんだ。
この姿最近よく見た
というより
7年もの長い付き合いだしな。
「ステータスオーブン」
ーーーーーー
名前 アルカナ
種族 エルフ族〈隠蔽/悪魔族〉
職業 魔導師 統治者
統治国家 ユグドラシル
Lv 35〈封印/Lv 834〉
HP 265〈封印/24060〉
MP 125〈封印/36800〉
【契約】【魔神化】【部分解除】【配下召喚】
称号 まんまエルフ ユグドラシル王 人間の敵対者
ーーーーーー
あ、開いた。よかったよかった。
これで開かなかったら笑い物だよね。
近くに笑ってくれる人はいなさそうだけど。
逆に隣から『あははは』とか聞こえたらホラーだわ。
…………うん、いやわかってたよ?なんとなくね?
うわぁぁぁぁぁ!やっぱりか!
やっぱり!
やっぱりだよ!
俺がプレイしてたゲームのアバターじゃねえか!
何故あんなことをしようとしたのか、昔の俺は。
エルフがいないゲームで他ゲームのエルフを参考に似せて作ったキャラじゃねえかよ。
ってかやばいな…
称号とかさ。
エルフがいないから見た目がエルフぽい笹耳を持つ悪魔族で作ったんだけど、人間を殺しまくってたら人間の敵対者なんて言う称号がついてた。
ゲームの世界観が、
『神のいない地、生を謳歌していた人間界に魔界より湧き出した悪魔たちが侵攻してきた……ry』と始まるんだよね。
人間と悪魔が戦って領地を取り合ったり殺したりする感じだったから、ある程度遊んでいれば人間の敵対者とか言う称号がついても不思議じゃないけどさ。
こう……アバター転移をしてしまうとなると。困ったなー。あははは、あはははははは。
笑っていても何も解決しないんだよな。
いやね、エンジョイ勢と言われる連中はプレイヤー同士でルールを決めて軽くPvPをしているくらいだったよ?たしかに。
ガチ勢というにはおこがましいかもしれないけど、俺はこのゲームが大好きだったし。
だからPKギルドに入って遊んでいる身ながら、国家を作って運営し始めても、現実世界であった如何なる用事を疎かにしてもゲームに傾倒したなぁ。
本気だったよ。ガチ。なんでも勝利にこだわったり、1番を目指したがるガチ勢とは少し違うが、俺も彼らに負けず劣らずの本気度をみせたんだ。
ゲームの世界は平等だと思ったからね。
それこそ課金無課金の差はあるけど。
流行りのVRゲームでもない。MMOなんて過去の遺産といってもいい中、PCゲームが一番自分に合っていた感じがしたんだ。
ただ、ゲーム世界は性格や容姿、家柄、友好関係に左右されないっていうのがいいよね。
生まれは一般家庭でヤクザとか犯罪者の親族がいるとか特に悩む事もなく、容姿はブスでもイケメンでもなく、友達は少ないが芯から信用できる仲間はいたけどさ、ゲームは、そうじゃなくてなんかいいなと思っていた。
ゲームを使った世界平和。これについて真面目に論文を書いていた時もあった。ノーベル平和賞貰ったぁ!っておもいながら。結局出さず仕舞い。
結局、廃人プレイヤー止まり。
まぁ当時は名誉とか割とどうでもよかったからいいんだけどね。今は少し欲しい気持ちもある。
自分が考えたゲームによる世界平和。
毎日ログインして話している相手が自分の大っ嫌いなクラスメイトかもしれないし、ギルド1の可愛らしい発言をしている姫プレイヤーがアルバイト先の居酒屋で絡んできた禿げた中年オヤジかもしれない。
ただゲームを挟めばそんなことどうでもよくなる。
ゲーム中ではアバターがその人で中の人とかいないんだっていう見方でゲームをしていた。下らない理論だけど悪くないだろう。
平和で自由な場所。親に中身がないうわべだけの存在だから現実の友達を作れと言われたが、うるせぇなと聞き流した。
ああ、懐かしいな。なんかしみじみとしてみたけど3か月くらい前の話だったっけ?
なんとなく自分の姿を見てみればエルフだが、pcの画面に向かっている頃から俺はエルフで悪魔のくせにエルフ気取りのPKerのアルカナだった気もする。
ゲーム狂人でもあったが、今この状況に非常に安心感を持っているのは、昔からゲームをしながら操作していたアバターを、アルカナというゲームキャラクターをもう一人の、鏡の向こうの自分のように思っていたからだろう。
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