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二人で街を歩けば、
「 ほら、又振り返ってるよ。富士子は美人だからなー。」
と、直樹は必ず言うけど富士子はいつも、
( みんなお前に見惚れてんだろうよ。)
と、心の中で毒付く。
何の変哲も無い普通の服でも、おじさん達が被ってる変な帽子でも直樹が身に着ければメチャくそカッケー。1カ月のサラリーより高いブランドの服を買ってしまう富士子とは大違いだ。富士子は自分に自信が無いからブランドに頼ってばかりだ。
でも、そんな事を言ってくれるのは直樹だけだ。直樹は若く美しく優しく才能に溢れる完璧な男だった。彼はきっと有名な音楽家になるだろう。イヤもう既に有名なのかもしれない。直樹の音楽を聴いた人なら誰でも彼の才能が解るはずだ。おまけに見た目が凄く良い。
(この綺麗な若い男と関係が持てるならばお金を出す人は幾らでもいるでしょう。)
富士子の恋人と友達に公言してくれただけで有難いと思うべきなのかもしれない。
直樹は両親から一度も怒られた事が無いと言った。
「 富士子も無いでしょう?こんなに真面目で純情な大人は見た事無いよ。富士子を騙すのは簡単だろうな。すぐに何でも信じるから。僕は騙さないよ。愛してる。」
直樹はいつも甘く優しい言葉を富士子にかけてくれた。怖かった事なんて一度も無い。とことん甘い、甘くて甘くて恥ずかしくなる程だった。直樹は富士子が欲しい物を全部くれた。優しい甘い言葉、態度、一緒にいて楽しかった。
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