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この前、直樹の部屋で見た裸の女の人も富士子と何が違うのかと思う。そもそもアポ無しで合鍵で部屋に入ったりしなければ見ないで済んだはずだ。直樹はわざと富士子に見せた訳では無い。それにその後こんなに神妙な顔をして、こんなに遠くまでドライブに連れて来てくれた。
(それだけでも有り難いと思うべきなのでは?)
富士子の心の中で優しい富士子が許せと囁く。
「着いたよ。」
直樹は車を止めて2人で降りる。
「綺麗なところだと聞いていたから一度富士子と来たかったんだ。見て誰もいない。ほら世界は二人だけの物だよ。」
カラスが4回鳴くと遠くで4回返す。5回鳴くと遠くで5回返す。直樹は息を吐くように甘い言葉を発した。
( 多分直樹は誰にでも優しいんだろう。)
富士子の中の慎重な富士子が囁く。
「 富士子あのね富士子はいつも部屋から帰る時、僕が居なくても洗濯したり掃除したりしてるでしょ。富士子は僕の彼女であって家政婦さんじゃないんだから、そんな事しないで良いんだよ。」
( なぜ今それを言う。やり方が気にいらないのかな。)
「 合鍵を返せと言ってるの?」
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