魔法の時間

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 パソコンモニターの後ろに引かれたカーテンの隙間から、かすかに光が差し込んでいた。  また朝が来た……。  俺はヘッドホンを外し、オンラインゲームをやめた。腕を突き上げると、凝り固まっていた身体がぼきぼきと悲鳴をあげる。条件反射のように出てきたあくびと共に、俺はそのままベッドへなだれ込んだ。  薄暗い部屋の中で、光源となっていたディスプレイがスリープモードに切り替わった。俺もスリープしようと目を閉じたとき、壁一枚隔てたところから、かちゃっと玄関扉が解錠された音がした。  ドアがきぃっと軋んだかと思うと、静かにぱたんと閉じられ、再び鍵がかけられる。そのあとは、外の廊下からペタペタという足音が耳に届き、だんだん小さくなっていく。  俺が昼夜逆転の生活をするようになって一ヶ月弱。数週間前から、母さんは早朝、日が出るか出ないかのタイミングを見計らって、散歩するようになった。  俺に関係あるのかないのか知らないけれど、こっそり出て行かれると俺の心がざわつく。願掛けでもされてんのかなと思ったりする。 「眠れねー」  俺は起き上がった。
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