teardrop

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 恋が叶った瞬間、まるで空から宝石が降ってきたみたいに、世界のすべてがきらめいて見えた。教室の窓から差し込む夕日はこんなにも眩かったんだって、感動したのを覚えている。木目の床に落ちたふたりぶんの影も、たとえば透き通ったアメジストみたいに、繊細なかがやきをまとっていた。そして何よりも、いちばんにきれいだと思ったのは、私を見つめるやさしい瞳だった。  その恋が裏切られたとき、きらめきは瞬く間に消え去った。私が視線を向けるすべてに、砂嵐がかかったかのように。ざらざらとした無機質な世界は、私の感情にいくつもの細かな傷をつけてゆく。
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