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第4話 池上優留(まさる)と田渕佑香 (その後)
大きな契約が成立したお祝いの打ち上げ会が終わった夜に…ホテルでベッドを共にした優留と佑香の関係は、それっきり という事には 成らなかった。
佑香は大学時代にも真面目なほうで……
女子大学というのもあって…男性との付き合いには慣れて無かったし……
芽生えた恋心をどう処理すれば良いのかさえも…分からなかった。
優留が本当の優しさで…佑香を突き放す事をすれば良かったのかも知れないが……
優留は元来争いを好まない…事なかれ主義者だったようだ。
とはいえ、優留のほうから積極的に佑香を誘う事は無かったが……
佑香からの強引とも言える誘いを断る事は…
優留には難しかったかもしれない。
[適当に相手をしておけば……そのうち佑香の気持ちも変わってくるだろう…。]
そう優留は鷹を括っていたようだ。
いっそ…佑香のほうから
[奥さんと別れて私と一緒になって!]
と言われたほうが決着がついたのかもしれない。
優留と佑香の男と女の関係はズルズルと続くことになる…。
……………………
優留と佑香の所属する課に織田浩太(おだ こうた)という25才の男が他の課から転属されてきた。
1ヶ月ほどは慣れる期間というのもあり……
織田が同じ課の女性を意識する事も無かったのだが、
彼は…同じ課の佑香に関心を持ち始めた。
しかし、田渕佑香は器用に振る舞えるほうでは無かったので……
すぐに佑香が池上課長に好意を持っている事は…
織田から見ても 直ぐに分かった。
[でも……池上課長って、確か妻子持ちだったよな…。]
織田は二人の仲を祝福することは出来ないと思っていた。
そんな時に、新しい企画を織田浩太と田渕佑香の二人で取り組むようになった。
佑香は新人ながらも課長と共に大きな契約を取った手腕を見込まれての事だろう。
今まで…大好きな池上課長と仕事をしていたから…
佑香の戸惑いは予想以上だった。
何か用事を見つけて池上課長に話しかけて行ったり……
逆に…織田浩太と二人っきりの場面を避けていた。
その日も織田との打ち合わせが完全では無いのに……
定時で席を立ち……会社から少し離れた場所で池上と待ち合わせをした。
「私……課長と一緒が良いんです……
織田さんとなんか……仕事したく無い…。」
「田渕さん……仕事とプライベートは分けないといけないんじゃ無いか…。」
田渕佑香は…そんな事分かってると言わんばかりに…
顔に手を当てて泣くような仕草をする。
「じゃあ……今日は私に付き合ってください。」
そんな佑香の真剣さに池上優留はノーと言えなかった。
二人は駅裏のホテル街に消えて行く…
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