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その日の夕方……
織田は池上課長と田渕佑香の後を尾行してみた。
新企画を下ろされてしまった腹いせか…ただの好奇心からか……腹立たしい思いが、織田の行動の原動力のようだった。
課長と佑香は一件目に居酒屋に入った。
[俺と田渕なんか…呑みにも行った事も無いのに… ]
織田は顔を帽子で隠すようにして同じ店に入る。
離れ過ぎず…近づき過ぎない…なんとか会話が微かに聞こえる程度の席に陣取る。
「佑香君……誰とでも上手く仕事しなくちゃいけないよ…。 部長が言うように相性があるのかもしれないけれど……。」
「すみません……私だって そう思っては いたんです。 でも…いざ新企画に織田さんと取り組み始めると……
ここは課長とやり方が違うな…とか
以前は こういう 算出方法だったとか…
資料の添付方法はこうだとか……
池上課長のやり方に…意義付けもせずに
言われる通りをやってたので…
応用が利かなかったんです…。」
「そうか……大きな契約が取れたから…
佑香君の…そういう処を見てあげられなかったんだな……。 申し訳無かったね…。」
「池上課長……課長は優し過ぎるんです…。
だから……私 甘えてしまって……
気が着いたら……。」
しばらく二人は沈黙した。
[そう言えば……田渕さんって新卒の新人さんだったもんな……仕方無いよな……。]
織田は納得したように……気持ちが晴れて店を出た。
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