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手を合わす
僕は毎朝、家の仏壇に手を合わす。
田舎で、昔ながらの古い日本家屋の我が家には、それに見合う仏壇がある。
物心がついた時にはその習慣を、祖父母に教えられていた。
それは、中学二年になった今も続いている。
蛍光灯の光に照らされた仏壇は、朝日が射す縁側よりも明るい。
光に照らされた先祖代々の位牌に、新しい朝を迎えられた感謝を込めてリンを打つ。
この中で、僕の知っている位牌は少ない。
幼稚園の年中の時に、自宅で介護をしていた曾祖母。
小学校五年生の時に、足を悪くした祖母。
そして、今年の記録的な猛暑の日に祖父。
あぁそうだ。まだこの世に誕生する前に消えた、僕の妹もいた。
そう言えばこれが、一番最初の身近な人の死。だった。
母さん、この家に住む家族はもう三人になってしまったね。
母さん、最近帰りが遅くなってきた父さんが心配だね。
心の中で念仏を唱えながら、僕は、手を合わす。
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