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ぼんやりと川を眺め始めてからどれくらい経ったのだろう。だんだんと手足の感覚がなくなってきた。 「いい加減、帰ろうかしら。」 結局、遠くへは行けなくて、彼の家に初めて行った日の帰りに2人で眺めた川の土手に座っていた。あの日のように、川原で遊ぶ子どもたちをたった1人で眺めながら。溜め息をつきながらゆっくりと立ち上がって、お尻の下に敷いておいたビニル袋をつまみあげる。くるくると丸めてバックにつっこんで、服をたたいて草を落とす。彼が似合ってると言ってくれたブルーのストライプのワンピースは、気づけばしわしわになっていた。 「どうせ見つかりっこないって分かってたのにな。」 冷えた指先を揉みながら、橋に向かって歩き出す。バックの中のスマホは鳴らない。電源を入れて確認するのも怖くて触りたくない。彼はきっと私が家に帰ったと思ってるに違いない。足元を見ながらだらだらと歩いてるうちに、ようやく橋にたどり着いた。真ん中まで歩いていって、橋の下の川を眺める。もうオレンジ色の空になっていて、水面がきらきらと優しいオレンジ色に光っている。じわりと滲む視界に、また溜め息をつく。 遠くから私を呼ぶ声がした気がして、ふ、と左を向くと、力一杯抱き締められた。訳もわからずもがこうとすると、更にきつく抱き締められて耳元で小さなすすり泣きが聞こえた。 「メッセージは読まないし電話もでないし。」 じんわりと夕日が山の向こうに消えていく。滲んでいく視界と暖かさにほっと溜め息をついた。
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