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オジサンはため息を付き、アテなんてないんだろ?と聞いてきた。僕は頷いた。
「でも、全財産持ってきたし、暫くは野宿出来ますから」
「金が尽きたら?ワシみたいには生活出来ないだろう。浮浪者の生活はキツいぞ」
「それでも、自由があるなら耐えられます」
僕の言葉を聞いたオジサンは、急にさっきのコロッケを地べたに落とした。そして僕に食え!と睨み付けた。
「嫌ですよ!汚い」
「じゃあ坊主には浮浪者は無理だ。今日はもう夜中だから、一晩ワシが一緒に居て守ってやる。明日、日が昇るのを待ってすぐ帰りな」
オジサンは落としたコロッケをヒョイとつまんで、口の中に放り込むとモグモグと咀嚼し、ゴクンと飲み込んだ。呆気にとられている僕に、オジサンは尚も続ける。
「ワシらはな、地べたに落ちた食い物も、ゴミ箱の中の食い物も平気で食うんだ。そうしないと生きられない、ゴキブリみたいな存在だぞ。上手く飯が見付からず食えない時もある。風呂にも入れないから体は臭いし、痒いぞ!普通に生活している人間に、石を投げ付けられる時もある。そんなワシらに自由があると思うのか?」
「…ごめんなさい」
僕は自分を恥じた。この人達は親に縛られない自由があって良いなと思ってた。でも、僕とは違う不自由がこの人達にはある。
「坊主、家出の訳を話せ。人に話せばスッキリする事だってあるぞ」
オジサンにそう促されて、僕は自分の身の上話をした。何故見知らぬオジサンにそう出来てしまったのかは分からない。でも、信用出来たのだ。オジサンの優しい雰囲気が、僕を安心させたのだ。僕の話の途中で、オジサンも自分の身の上話をしてくれた。オジサンはイサオさんというらしかった。訳があって浮浪者になり、この公園でもう3年は寝泊まりしてるらしかった。拾い集めたお金で、年に1度ケーキを買い、自分の誕生日を祝う。それだけが生き甲斐らしかった。
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