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さて、帰ろう。僕は公園を出て、アテもなく歩き出した。昨日は闇雲に走ってしまったので、道を覚えていなかった。携帯電話は持っていない。小学生には必要ないというお母さんの考えで、最初から持たせてもらっていなかった。ここがどこなのか、サッパリ分からない。ちゃんと辿り付けるのかという不安を抱えながら歩いていると、僕の真横に急にパトカーが停まった。窓が開き、山口修君かな?と警察官に尋ねられた僕は、はいと返事をした。こうして、僕の家出はあっさりと幕を閉じた。警察官に保護された僕は、あれよあれよという間に親元に帰された。自宅に戻され、お母さんと対峙した僕は、とりあえず謝罪した。家出して迷惑をかけてごめんなさいと。その瞬間、お母さんは叱責の鬼と化した。私のいう事を聞かずに家出して!警察にお世話になって!恥ずかしい子!だいたいあんたは…!
以前の僕なら畏縮して、お母さんの前で固まっていただろう。だから良い子をやっていた。だけど今は怖くない。僕が涼しい顔で聞き流していたからなのか、もういい疲れたとお母さんはため息をついて寝室に籠ってしまった。
僕は自室にリュックを置いて、お風呂に向かった。昨日の全力疾走の汗を洗い流し、イサオさんの言葉を思い返した。ちゃんとお風呂に入れる生活は、幸せなんだと思った。
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