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中学生になった僕は、家出した時に寝泊まりした公園に、直樹君と一緒に訪れた。今日はイサオさんの誕生日。ケーキとフライドチキンを手土産にして、2年前のお礼を伝えに来たのに、夜になってもイサオさんは現れなかった。話したい事は沢山あった。友達が増えた事、陸上部に入部して長距離走の選手になった事、母親とは喧嘩しつつも何とか良い距離を保っている事、2年前お世話になった時の感謝…。たった数時間一緒に居ただけのオジサンだけど、僕にとって忘れられない人物だった。もしかして、寝泊まりする場所を替えたのかもしれない。考えたくはないけど、亡くなっているのかもしれない。だってあれから2年。イサオさんの人生だって大きく変わっていてもおかしくはない。
その時、自転車に乗った警察官が公園の前で止まり、僕達の方に近付いてきてこう言った。
「君達は中学生かな?夜遅くまで遊んでちゃダメだよ。危ないから早く帰りなさい」
はい、すみません…と返事をして、ベンチから立ち上がると、僕は警察官にイサオさんの事を尋ねた。
「ああ、この公園に寝泊まりしていた浮浪者なら、自立支援施設に入居したんだよ。最近、この街に施設が出来てね。やっぱり公園に浮浪者っていうのは不安を感じる住民が沢山居るし、僕が紹介したんだ。今頃、自立に向けて頑張ってるんじゃないかな」
警察官は僕達にそう説明して、また自転車に乗ってパトロールに戻っていった。
イサオさんは僕との雑談の中で、屋根があって風呂に入れて飯に困らない刑務所以外の場所で生活したいと言っていた。良かった、イサオさんにも光が射していた!僕達はイサオさんの光輝き続ける日々を祈りながら、帰宅の為に歩き出した。
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