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冬霞が目を覚ますと、一人だった。あの幸せな時間は夢であったのだろうか。ゆっくりと起き上がってみると、縁側に座る一人の男の背中があった。
「殿、まだお帰りになられてないのですか?」
「ああ、家臣には泊まると言っておるからな。ただし花街にと嘘をついたがな」
「貴方様は変わっておられませんなあ」
冬霞が呆れたように笑うと、八雲もくくっと笑う。
「…………なあ、冬霞。次はいつ戻ってくるか」
八雲の問いに冬霞は苦笑した。
「さあ……いつになるのやら」
「来年の秋だ。それまでには戻ってこい」
答えをはぐらかそうとした冬霞に八雲は静かに命じる。
「ですが……貴方様や兄に迷惑をかけるわけには……」
「わしは迷惑ではないし、紅原も何だかんだ言ってお前が嫌いではないだろう。…そういえば中々あの機会が無かったな。よし、朝餉を食い終えたら一緒に謝りに行くぞ」
「あのことをまだ覚えていらっしゃったのですか!?」
「当たり前だ。お前が泣きながらわしに打ち明けたのだからな」
あの時のことを鮮明に思い出して恥ずかしくなる。そんな冬霞を八雲は引き寄せた。

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