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公園では女の子たちが日陰でままごとをしていた。「暑いからきをつけてねー!」奈央が声をかけたが女の子たちは遊びに夢中で気付いた様子はない。
「私を裏切ったのね」ままごととは思えない不穏な台詞が聞こえてきた。
「最近の子はませてるねぇ」
あはは、と奈央が笑う。
「そりゃ、川に飛び込む男どもが子供にみえるわけだ」
ふと高校生の自分は奈央にどう見えていたのか気になった。
「ん? なあに?」
奈央が俺の視線に気づく。
「なんでもない。次はどこ行く?」
「小学校!」
「知っている先生はもういないよ」
「いいの、いいの」
子供の頃と変わらぬ強引さで奈央がずんずん歩いていく。
その後も中学校、村で唯一の小さな図書館など共通の思い出がある場所を順繰り巡っていく。
日が傾き、西の空が赤に染まり始めた。
「奏くん」
奈央が立ち止まる。俺も立ち止まる。
「最後に行きたいところがあるんだけど……」
らしくない妙に真剣で静かな声だ。
奈央の表情は風に煽られた髪でみえない。
あぁ、とうとう来たか――そんな風に俺は思った。
今日、奈央に会った時から覚悟はしていたけど……。
「うん。良いよ。行こう、奈央ネェの行きたいところに」
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