第一章

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それからは、会う度にキスをした。 夜の公園で。光貴さんの車の中で。またはプラネタリウムの星空の下で。 何度しても足りないと思うくらいに、何度も何度もキスをした。 夏のある日、会社の五十周年の式典があった。 僕はバイトだから参加出来なかったけど、正社員の光貴さんは参加した。 その式典が終わった後に、珍しく光喜さんから「会いたい」と連絡が来た。 何も予定がなかった僕は、二つ返事で「いいよ」と言い、駅に向かった。 駅まで迎えに来てくれた光貴さんの車に乗り込み、海が見える洒落たレストランに行く。 光貴さんは、式典の帰りだからスーツの正装だけど、僕は白シャツに茶色のチノパンというラフな格好だった。 「僕、こんな格好だよ?入っていいの?」 「大丈夫。そんなに堅苦しい店じゃないよ」 そう言って笑う光貴さんに手を引かれて、店の中に入った。 光貴さんは、いろんな店や場所を知っている。 大人っぽい落ち着いた雰囲気の、ジャズの生演奏が流れるバーにも連れて行ってもらったことがある。 そんな所も、僕よりとても大人に感じて、興味を持ったのかもしれない。 海の遠く向こうに光る船の灯りを見ながら楽しく食事をして、再び光貴さんの車に乗り込んだ。 光貴さんは、しばらく無言で運転をしていたけど、あるホテルの前でハザードを出して車を停め、僕の目を見て「…いい?」と聞いてきた。 僕は少し躊躇ったけど、光貴さんの目を見つめ返して無言で頷く。 そのまま光貴さんも無言で車を発進させると、ホテルの駐車場へ入って行った。 車を降りて、僕の手をしっかりと握って中へ入る。部屋を選んでエレベーターに乗り込みながら、光貴さんが「ちゃんとしたホテルじゃなくてごめんな」と謝った。 僕は首を左右に振って、繋いだ手に力を込める。 光貴さんもふわりと笑って僕の手を強く握り返して、エレベーターを降りた。 部屋のドアを開けて中に入ると、ドアが閉まるよりも早く、抱き合った。 お互いを強く抱きしめ合い唇を重ねる。 初めてキスした時から思っていたけど、光貴さんとのキスは気持ちがいい。 それは、キスだけではなかった。 もつれるようにベッドに倒れ込み、キスをしながら服を脱ぐ。全裸になって素肌をピタリと合わせると、それだけで痺れるように気持ちが良かった。 光貴さんに丁寧に全身を愛撫され、丁寧に後ろを解された。 ゆっくりと光貴さんの大きなモノが僕の中に収まり、意図せず僕の中が震えた。そのせいなのか、光貴さんが入れただけで果ててしまった。 「ごめん…。空良が可愛すぎて…」 そう言って照れ笑いをした光貴さんの頭を、僕は胸に抱き寄せて、そっとつむじにキスをした。
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