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楽しさ虚しさ
「いーち、にーい、さーん、しーい、……さーんじゅ!もーいーかーい!」
森に九鬼の大きな声が響く。
今日は二日目。
かくれんぼの時間。
「もういいよ。」
「どーこかな!どーこかな!そこかっ!」
違うところに向かって九鬼は言った。
「違がった!どこかなーあまりは!」
違うのに楽しそうで、思わず天利は大きく吹き出してしまった。
「ブフッ!」
しまったと思ったときはもう遅かった。
「あまり見つけた!」
「あーあ、見つかっちゃったか。もう、九鬼が面白すぎて吹き出しちゃったよー。だって違ったら、違った!、て大声で言うんだもん。」
「やった!やったー!私の勝ち!次はあまりが鬼の番ね!」
「わかったよ。」
(俺は幽霊の場所がわかるから一瞬でわかっちゃうな。最初は適当にわかってない感じでいるか。そうじゃないと可哀そうだし。)
天利は木に顔を伏せながら、こう考える。
「……三十。もういいかい。」
「もーいーよ!」
(声だけで場所わかりすぎでしょ。)
「九鬼さんは何処にいらっしゃいますかな?。どこかなー。」
「ここでーす!」
わかってないふりをしていると、大きな声が聞こえてきた。
天利はまさか自分から言ってしまうとは思ってなく、びっくりしてまた笑ってしまった。
「ちょ、九鬼それはない!ふふっ、マジでそれはないよ九鬼。ふふっ、自分から言ったらわかっちゃうでしょ?」
「そうだった!忘れてた!てへへへ!」
「もー九鬼ったら。」
「あまりもだいぶ笑顔になってきたね!」
「そ、そう?」
「うん!全然違う!最初全然笑ってくれなくて悲しかったんだよ?」
そんなふうに時間が過ぎていく。
それからも鬼ごっこやだるまさんがころんだ、影踏みなどの遊びで遊んでいった。
天利も最初は面倒だと思っていたが、今は楽しくて仕方なかった。
時間が止まってほしいと思うほどに。
でも、時間は止まってくれない。
どんどん過ぎていく。
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