最期

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「ロキ!!」 迅は大声で、フェンスの外側に立つ少年の名前を叫ぶ。 ロキはゆっくりと振り向いた。月の光でかろうじてその表情が見える。 ロキは静かに涙を流していた。 そのロキの表情を見て、迅は言葉を詰まらす。ロキが一歩でも足を踏み出せば、もしくは強い風が吹けば、ロキは地上に落ちて死んでしまうだろう。 「・・・なんでお前が。一緒に死ぬって、」 「・・・。」 「なんか言えよ。」 いつもはおしゃべりなロキが黙っている。迅はフェンスに近づいてた。 「さっきは俺がその・・・悪かった。ごめん。なんかキレて。」 「・・・うん。」 「だからさ、なんか話してよ。親友だろ。」 迅は泣き腫らし赤くなった瞳でロキを見つめる。声も鼻声で、今にも泣きだしそうだ。 不意にロキが口を開いた。 「俺さ、母親いないじゃん。」 「うん。」 「でさ、父さんが再婚するじゃん。で新しい、というか義理の母親できたの。」 その事実は迅も知っているものだった。しかし、次に告げられた事実はとても衝撃的なものだった。 「俺その義理の母親に・・・殴られたり、蹴られたり、あんま言えないようなことされてんの。」 「は!?」 たしかに、ロキは普段から怪我が多い。しかしその怪我は遊んでいた時や体育の授業のときに出来たものだ、と迅は思っていた。 事の重大さに、迅は何も言えないでいた。 「汚いでしょ。俺の身体。あのババア父親にバレないようにちょっかい出してくんの。」 ロキはそう、自虐的に笑う。 「でさ、そろそろもう解放されたい。死にたい。」 すると、ずっと黙っていた迅が口を開いた。 「俺はクラスで、虐められてる。基本無視。時々水かけられたり石投げられたり。首謀者がイキリ陽キャだから担任も見ないふり。俺の態度が気に入らないらしい。俺も卒業までの辛抱だと思ってたけどもう無理。」 「は?」 「これでおあいこだな。俺もちゃんと死にたい動機話したから。じゃ、」 迅は一番最初、ロキに言われた言葉をそっくりそのまま返す。 満面の笑みを浮かべ、こう言った。 「一緒に飛び降りようぜ。」
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