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哀楽の気持ち
「それはですね。私が君に会いたかったからです。駿河羽夜斗くん。」
なんでオレの名前を知っているのかと思ったけれど、それもこいつの力だろうと納得した。
「なんで会いたかったかというとですね、君にあることを伝えたかったのです。」
「昨日言ってたオレの未来ってやつか?」
「違うような、合っているような、そんな感じです。実は私ですね、魔法使いといいましたが、予知ができるんです。生まれた時からそんな不思議な力があってですね。周りの人から気味悪がられて両親に捨てられました。それで空腹で死にそうだった時、君に会いました。おなかがすいてそうだった私を見て、君はその時持っていたお菓子をぜんぶ私にくれたんです。もう何年も前のこと、君も私も小学2年生くらいの時でしたから覚えてないと思いますけど。だからその時の気持ちを君に言うために会いに来たんです。」
本当に覚えていない。
ってか──、
「予知ってすげえな。じゃあこれから起こることもわかるってことだよな!」
そういったとたん魔法使いが顔を歪ませた。
「よ……。」
「よ?」
「よかったよぉ、君にあの人たちみたいに気味悪がられたら、どうしようと思って怖かったですけど、そんなことなくてぇ。」
大泣きしだしてしまった。
なんでかよく分からなくて、びっくりする。
「お、おい泣くなよ。ていうか怖かったって、予知すればわかるんじゃないのか?」
「こ、怖くてしてなかったんですよぅ。」
「泣くなって、泣くなって。」
それから少しの間魔法使いは泣き続けた。
そんな怖かったのに自分に話してくれたんだなと思うと、さっきよりもさらに好きになってしまった気がする。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。」
「お、おう。」
魔法使いは大きく背伸びをした。
何かの決心をつけているみたいだった。
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