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絶望と困惑
目が覚めたのは病院のベットの上だった。
オレはとっさに飛び起きて、近くにいた医者に聞く。
「あ、あの!由雨紀は、轢かれた女の子は、無事ですよね!?」
その医者は困ったような顔をして、とても残酷なことを口にした。
「大変申し上げにくいのですが、その女の子は亡くなってしまいました。即死でしたので、我々にもどうすることもできませんでした。居眠り運転だったそうです。」
そんなことを言った後、医者は出て行ってしまった。
そんな医者がいるのか。
でも、そんなことどうでもよかった。
由雨紀はもうどこにもいないのだと理解すると、今まで流したことのないような大粒の涙が溢れ出してきた。
悔しくて悔しくてしょうがなかった。
だって、考えればすぐにわかることだったのだから。
あの、未来を見たときのあの表情。
あの、信号機を待っている時の言葉。
きっと由雨紀は悲しんだに違いない。
未来を知って、怖くなったに違いない。
それなら、どうして……。
「どうして、何も言ってくれなかったのかなぁ。」
言ってくれれば、解決策を一緒に見つけられた。
より濃い時間を過ごせた。
ずっと一緒にいれたのに。
そんな言葉が、誰もいない病室に響いた。
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