携帯電話

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「何が目的なんですか?」 向こうの空気が止まった。 『あなたのファンです。それだけですよ』 彼が言うには元ギタリストで半分趣味でやっていたが仕事が忙しくなってやめてしまった。 たまに未練がましくライブハウスを覗くことがあり、そしてあなたを見つけたんですと、それが彼の言い分だった。 「それはどうも・・。ありがとうございます」 『ストーカーだと思った?』 「少しだけ」 彼はおもしろそうに笑ってから、バンギャちゃん達の中に突入する僕の勇気をどうか信じてくださいと言ってまた笑った。 『北陸は寒いですね。早くメジャーデビューして東京に来てください』 もっと話していたいけど明日早いので今夜はこれで失礼しますと言って彼は電話を切った。 ・・・俺のほうが聞いていたかったな。 耳に心地よい低い声。 この感情が何なのかわからないほど子どもじゃない。 そしてもう堕ちてしまっていることを認めるしかなかった。
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