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携帯電話
どうしよう・・・。
部屋に戻ってきてエアコンの効いた温かい室温より自分の体温のほうが上なんじゃないかという気がする。
壁に背中を預けて番号の書いてある小さな紙を眺めながら何度ため息をついたかもうわからない。
普通はインディーズのファンなんて女の子ばかりだ。
その中で男が一人、スーツ姿でライブハウスにいたら違和感この上ない。
いたずらなのかな。
電話、かけてみようか。
こんな紙、捨てたっていい。
なぜ自分は番号をながめながらこんなに悩んでいるんだろう。
若く見えたが俺より10は上な感じだ。だが身につけているもの、クルマは高級品だった。事業でもやっているのか、ヤバい稼業の男なのか。
水商売っぽい雰囲気もある。
『無造作な黒い髪が綺麗だったな』
あーーーもう何でこんな得体のしれない奴のために俺はこんなに悩んでるんだ!!
電話して聞いてみれば解決するじゃないか。ここで考えてても情報がなさすぎて答えが出ない。
留守電になってることを祈りながら思い切って電話番号をゆっくり押した。
『もしもし』
すぐに出た。
「あの・・、お花ありがとうございました」
『かかってこないと思った。電話ありがとう』
携帯のむこうでクスクス笑っている感じが伝わる。
少しだけムッとした。
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