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虚言の誘い
お昼過ぎ、少年は人が賑わう場所で、壁に寄りかかりながら座っていた。
すると女の人が近づいてくる。
「ねえ、君。どうしてここにいるの?」
高校生くらいの人に声をかけられると、少年は口角を上げる。
「ママとはぐれちゃったの。お姉ちゃん、一緒にいてくれませんか?」
きゅるんっとした感じで首をかしげる。
小学生くらいで顔も整っている、そんな可愛い子にこんなことを言われた女の人は、もうデレデレといったようにその問いに了解する。
「ありがとう!お姉ちゃん。」
「ふふっ。私は羽田侑里よろしくね。君は?」
「ぼく?ぼくはね、怖都だよ。」
怖都は侑里に聞こえないくらいの声で言う。
「──こちらこそよろしくね、侑里お姉ちゃん。」
それからしばらく待っても、怖都のお母さんは来ない。
「お母さん、来ないね。どこ行っちゃったのかな。」
「もしかしたら、家に帰ったのかなぁ。ママ、抜けてるとこあるし。ねえ、家までついてきてくれる?」
「うん!いいよ。」
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