虚言の誘い

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

虚言の誘い

お昼過ぎ、少年は人が賑わう場所で、壁に寄りかかりながら座っていた。 すると女の人が近づいてくる。 「ねえ、君。どうしてここにいるの?」 高校生くらいの人に声をかけられると、少年は口角を上げる。 「ママとはぐれちゃったの。お姉ちゃん、一緒にいてくれませんか?」 きゅるんっとした感じで首をかしげる。 小学生くらいで顔も整っている、そんな可愛い子にこんなことを言われた女の人は、もうデレデレといったようにその問いに了解する。 「ありがとう!お姉ちゃん。」 「ふふっ。私は羽田侑里(はねだゆり)よろしくね。君は?」 「ぼく?ぼくはね、怖都(こうと)だよ。」 怖都は侑里に聞こえないくらいの声で言う。  「──こちらこそよろしくね、侑里お姉ちゃん。」 それからしばらく待っても、怖都のお母さんは来ない。 「お母さん、来ないね。どこ行っちゃったのかな。」 「もしかしたら、家に帰ったのかなぁ。ママ、抜けてるとこあるし。ねえ、家までついてきてくれる?」 「うん!いいよ。」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!