オールナイトキャンプ

1/55
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ

オールナイトキャンプ

九  まだ五月も半ばだというのに、気温は真夏日まで上昇していた。少し重いものを持つだけで汗が噴き出し、息が切れる。五つ目の段ボール箱を物置小屋に運び終え、そのまま箱に腰かけてひと息つく。 「ああ、もう、暑くて無理。冷凍庫に、もも太郎あったかな」  彰宏は部屋の片づけをしていた。段ボール箱に入っているのは、漫画本やゲームソフトやDVD。本棚にズラリと並べてあった大好きな声優アイドルのグッズも、箱に詰めて物置小屋にしまい込んだ。おかげで部屋の本棚は、教科書と参考書と問題集だけの、スカスカな状態だ。  その他、テレビやDVDプレイヤー、ゲーム機など、勉強に必要のないものはすべて撤去してした。壁に貼られていたアニメキャラクターのポスターも、弁天予備校のキャッチフレーズ『毎日が受験前夜』と書かれたカレンダーと交換した。  ずいぶんと殺風景な部屋になったが、それで納得していた。これからは心を入れ替えて、勉強だけに集中すると誓ったのだ。  物置小屋を出て、キッチンへと向かう。冷凍庫を開けて、かき氷アイスのもも太郎を取り出すと、すぐさま口に咥えた。ピンク色のシャリシャリとした氷が、体温を下げてくれる。 「ああ、生き返った。さあ、勉強、勉強」
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!