砂になりたい

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「ダイキ……?」  見覚えのある背格好に声をかけると、その人影はゆっくりとこちらを向いた。 「コウタか?」  首だけではなく身体ごとこちらを向いてくれたが、その顔に張り付いていたのはとてもシニカルな笑み。  駆け寄ろうと思っていた足が自然と重く、遅くなっていく。  フォーマルとカジュアルの中間点のような格好だった。  どこかへ向かうところだったのだろうか。 「久しぶりだな。高校卒業以来か」 「そう、だな」  その卒業からは3年と少しが経っていた。  関東にある国内トップクラスの大学に通っているダイキ。  互いにようやく成人を迎えたものの、互いに連絡は取っていなかった。    というか、取れていなかった。  いや、取れるわけがなかった。
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