4日目 気付き

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4日目 気付き

 朝からまる1日薬を抜く。  朝・昼と薬を抜いてコンビニに行ったけれど、相変わらず『お酒他人事』思考は継続中のようで、「今お酒を見たらどんな感じかな」と、意識して目を向けなければ、するっと通り過ぎる事の状態が続いている。  夜はバイト夜勤に入るので、そもそもお酒を呑む状況ですらないので、このまま1日をやり過ごす。  明日からまた、用法を守って服薬を再開しよう。  そこで、だ。  なぜ自分が『アルコール依存症』だと気付いたのか、という話しをしようか。  飲酒歴は倫理的に問題のある年齢からずっと……いや、ずっとでもない。呑まない時期もそれなりにあったので。  それから紆余曲折、できちゃった結婚を経て息子を連れて実家に帰り、別居、離婚を経て晴れて母子家庭となって働き、それなりにお酒も楽しみつつ生活していたように思う。  長らく、私は自分で飲酒をコントロールできていると思っていた。  実際、コントロールはできていた。  翌日が昼勤の日は500mlの缶チューハイを2本も呑めば眠れるし、休みの日は山道ドライブが好きで走り回っていたので、昼から呑むこともほぼ無かった。夜勤明けにハンバーガーを買ってダム湖道を走り回るのも楽しかった。  息子が小学校を卒業すると、県外の寮のある学校に進学して、家には私と私の母、脳梗塞で半身不随になった兄の三人になる。  実は私は、この母と兄と上手くやれた試しが殆どない。  家の中で味噌っかすで家族と上手くやれない子供なんて、まぁどこにでもある話しなので具体的には割愛するが、とにかくうまくやれない、お互いに金銭的な事などで利用し合う事はあっても、お互いに完全な味方であるかといえば、それは在り得ないちょっと歪な関係だと思ってもらえればいい。  ともあれ、それからだろうか?  いや、それでもまだ私は自分の飲酒をコントロールできていたと思う。  ただ、夜勤の回数が増えてくると、飲酒の機会も増えてきた、そんな感じかもしれない。  要するに、翌日が昼勤なら深酒しないで眠れたけれど、夜勤だと昼までに起きればいいわけで。  夜勤明けも翌日が休みなので、ぶっちゃけ朝から呑めるわけで。  けれど深酒が過ぎるといくら休みの日でもしんどい。ので、明けのお疲れさん飲酒をしたら夜は呑まない、もしくは軽く……  と、上手くやれるほどお酒は甘くなかった。  一度スイッチが入ると、どれだけ呑んでも足りなくなる。  どうせ明日は休みなんだし、とタガが外れる。  昼酒を呑んで少し眠って、呑み残したお酒を呑んでいると足りなくなる。  スイッチが入る。  歩いて片道三十分のコンビニに夜中の一時、二時でも買いに行く。道中海沿いの道に家の灯りは殆ど無い。家はちらほらと在っても電気なんて点いている時間ではない。  タガが外れているので、コンビニで買う中身も無茶苦茶で、呑み切れるはずのない量のワンカップ焼酎と、平常時では絶対に食べきれる量ではない許容量を超えた惣菜類。  朝になって飲酒の残骸を見て  狂ってんなコレ  そう思う朝が繰り返される。  どうせ呑み足りなくて夜中コンビニに行くんだから……と、開き直って最初から余裕を持ってお酒を買う。この頃には缶酎ハイは殆ど呑まないで、220mlのワンカップ焼酎を買ってヤカンに氷水を入れて割って呑んでいたが、このワンカップを五本買っても結局足りずにまた夜中のコンビニ散歩をする。  帰り道で堤防を乗り越えて海に下りる狭い階段で休憩呑みをする事もあり、酔った脳に夜風が気持いいだとか、ホンキで思っていたけれど、一度は転んで酷い擦り傷を負ったし、落ちていたら死んでいたワケなので、実際の所、  狂気の沙汰  である。  これが不思議と、翌日が昼勤務であれば日付変更線を越える前にストップできるし、旅先ではワンカップ一本も呑めなかったりするので『依存症』という言葉への目くらましになっていたのかもしれない。  けれど、自分でセーブできない飲酒が一か月のうち半数以上を占めるようになって、あからさまに飲酒が原因で困る事態が表面化されて目に余るようになると、流石に『これは……』と思い始めた。  もう、お酒やめよう。  何度も思った。  仕事中も、今日は呑まないぞ、うん、今の精神状態なら呑まずにネットでだらだらアニメ観たり漫画読んでれば夜が過ぎるぞ、と思っていても、職場を出て帰路につけば、お茶とお菓子を買うつもりで入ったドラッグストアで、スーパーで、足は『そうすることが当然』のようにお酒のコーナーに向かう。  そして家に帰れば「明日休みだから今日はもういい」と、風呂にも入らず自室に篭もってお酒を呑む。心も体も飲酒に向かって他の事が目に入らなくなっている。  あ、これが依存症ってやつだわ。  コントロール出来る日が無駄に在ったから、気付かない、いや、自覚しようとしていなかったのだと、気付いたのです。 続く
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