誰に語るともなく

5日目 飲酒が原因で困る事

　今日からまた服薬再開。
　夜勤先で利用者さんの朝ごはんを用意しながら、パンを食べて薬をのむ。
　断酒５日目、調子は上々。
　服薬以前だと、夜勤終わって家に帰る道すがらでスーパーに寄って、お疲れ様一杯に入り、昼過ぎまで呑んで夕方まで寝て、犬の散歩をしたらまた少し寝て、夜半に目が覚め、また呑んで。この繰り返しだったけれども。
　呑む、という気持ち自体が薬の効果か、自分の中から遠い存在になってしまっているようで、呑む事無く一日が過ぎる。

　ただ、これも薬の副作用なのかぼんやりと眠くて、集中力が、意識して保とうとしていないと散漫になってアニメも漫画も途中投げ出しで休憩を挟まないと前に進まない。
　けれど不思議な事にネット徘徊は続けることが出来るので、ぼんやりとする頭で続けられる事は問題ないし、結局は副作用と呼ぶほどの問題でもないんだろうな。

　と、いうワケで、「これが依存症なんだ」と自覚してみるにあたって、表面化されてきた『飲酒が原因で困る事態』を、改めて探りなおす。

　まず、ひとつめ。
　※　お金が無い
　貯金ができない。
　幸い、働く事は無駄なまでに好きなので、本業施設勤務に加えて二年前からアルバイト夜勤も始めたのでお金に酷く困る事が無かったせいで今まで気付いていなかったけど、不思議なまでに貯金が出来ていない。
　息子が希望の大学に受かって、さぁアパートだ入学金だ自動車学校の申し込みだ、と計算してみて、貯金が全く足りて居ない事に初めて気が付いた。
　慌てて、十月のお給料から簡単な家計簿をつけてみた。
　項目は『酒絡み』『食費』『雑費』『息子関係』の四つだけ。
　一か月経過の結果……

　酒絡み　19.350円　（オール宅呑み、肴用の食品含）
　食費　　14.540円　（夜勤用夜食、時々の外食等）
　雑費　　21.320円　（ガソリン・雑誌・本・洗剤等）
　息子　　29.010円　（今月は不動産往復と衣類・洗剤等）

　息子にお金がかかるのはしょうがない。高校も寮生活で洗濯も自分でするし、日祝日は寮食が出ないので自炊しているんだよ？　必要に応じて湯水のように財布を開いてしまうのは、母親としての性なのだ。

　それにしてもやっぱり酒類。外に呑みに行くわけでもない、ぼっち呑みでひとつきほぼ二万円？
　上記に綴った他にも当然、実家に入れるお金、息子の寮費・学校必要経費、ネットにスマホの通信費、保険、車の維持費等々。加えて、何で私が負担しなきゃならない？　的な家のリフォームのローンに兄が汚すトイレの洗剤……細かいな、私。
　そりゃー貯金ができないわけだわ。

　とにかく、飲酒が原因で困る事のトップは、金！

　次いで、身体的問題。
　太った。とにかく太った。二十年前は55Ｋ、適正体重だった私だが、十年ほどであっという間に70Ｋをキープ。今年の九月末で75Ｋ。
　膝が痛い。正座が出来ない。動きが鈍い。階段を上がると膝が軋む、息が上がる。
　昔、幼い息子と飛び回って遊んだ川原の岩場をもう登る事すらできない。
　鶏のから揚げが大好きで、酒の肴といえば唐揚げ。鳥唐だけならレパートリーは10以上ある。呑んでいなくても一人で鶏もも一枚は食べられる。
　それに酒の勢いが加わると、酔っ払った状態で唐揚げ作るし（危ない）、三枚は平気で食べてしまう。
　酒と油。恐ろしい化学反応で太るだけでなくγ値200に加え脂肪肝も達成した。

　このままじゃ息子の高校卒業式にまた礼服を新調しなければならない。
　……じゃなくて！　来年年明け早々にやってくる健康診断で、今まで逃げていた精密検査を今度こそ会社命令で逃がれられないだろう。
　とりあえず、十月から肴に揚げ物をやめる決意をした。
　これは意外にも上手く行った。
　要するに鶏が好きなのだから、胸ハム、焼きササミなどのレシピを増やして、更に鍋。昨今流行りのひとり分小分け鍋の素がとても便利で、鍋以外の料理にも使えて、野菜もたくさん食べられるし、おかげで十月末には体重69Ｋをクリアした。

　これで、お酒をやめることができれば……

　お酒をやめたいと思いながらもやめる事の出来ない意思の弱かった私が、個人輸入の薬に手を出し、実行するに至ったきっかけを作ってくれたのが、体重減の成功というリアルだった。