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千春のこと
千春は花の世話が好きだった。緑化委員という、存在意義がきわめて微妙な委員に立候補して、ひとりでせっせとクラス花壇の手入れをしていた。あいつが植えたチューリップの球根は、この春色とりどりの花を咲かせた。
千春は空を見上げるのが好きだった。あいつがぼんやりと、でも浮き浮きと見上げていた正門から続く銀杏並木は今年も黄金色に色づいた。
十月、蛍の飛ぶ日、思川で――俺との一年前の約束を千春は守ってくれるだろうか。
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