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エピローグ
*****
そして、あっという間に半年が過ぎていた。
美郷ちゃんと徹兄の赤ちゃんは、無事に元気に生まれて…もうすぐ3ヶ月になろうとしていた。
真澄さんが、予想していた通り生まれてきた子は、女の子だった。
そう…徹兄は、ようやく変態シスコン兄貴から卒業して…今では、娘の伊織相手に親バカを全開にしている。
伊織には、申し訳ないけど…私は凄く助かった。
最近の私はというと…真澄さんとの結婚式を来月に控えているので、色々と段取りに忙しかった。
もともと面倒なことが苦手な私は、出来るだけ招待客は身内だけでとお願いしていたのだけれど、希望は叶わず盛大な式になりそうだった。
あれから、夜刀の存在を知った父と母は凄く喜んでくれていた。真澄さんや師匠と兄弟だなんて…想像もつかなかったようで、父はすごく驚いていたけどね。
「世の中って広いようで…本当は、とっても狭いのね♪」
さすが天然で呑気な母は、余り驚かずにただクスクスと笑っていた。
織衣さんは、夜刀に置き去りにしたことを改めて詫びていた。
あの時、一緒に連れて行こうとしたけど…彼等に阻止されて連れて行けなかったのだと、涙を流しながら夜刀に事情を細かく話してくれていた。もちろん、夜刀は織衣さんのことを恨んでなんかいないと言って笑っていた。
お祖母ちゃんが、夜刀に色々と話して聞かせてくれていたから、夜刀は織衣さんたちを恨むようなことはなかったんだと夜刀は話してくれた。
改めて良く見ると…夜刀は、凄く優しいオーラを身に纏っている。
真澄さんに出会う前に夜刀と出会っていたら、もしかしたら好きになっていたかもしれない。夜刀は中身も外見も素敵なイケメンやしね。
そう言えば…そのことを悟ってなのか? 真澄さんが、遠方の依頼を断ってずっと私の側にいた。
「夜刀は、きっと光さんを愛している」
何度も夜刀が否定しても…真澄さんは聞く耳を持たなかった。私は、真澄さんだけ見てるつもりなんだけど…結婚してからも、心配されるんだろうか…まぁ、それはそれで嬉しいかもしれないけどね。
こんなことを言っていたら…また、順子に後ろから蹴られそうだ。
もちろん順子も、彼との結婚が無事に決まった。
それでも、私の方が先に式を挙げることが決まって…そのことを報告すると、順子は恋愛音痴の私に先を越されてすごく悔しいと嘆いていた。
*****
そして、結婚式を3日後に控えて…私の結婚式の報告と夜刀が無事に私や2人の兄さんに会えたことを報告するために…お祖母ちゃんのお墓参りに夜刀と2人で行くことになった。
「私ね、3日後には結婚式なんよ…報告が遅くなってしもて、ごめんねお祖母ちゃん」
私が、うっすらと瞳に涙を滲ませてお祖母ちゃんに結婚の報告をしていると…夜刀は、静かに隣で目を閉じて手を合わせていた。
「祖母さん…きっと、喜んでくれてるだろうな」
夜刀は、青く澄み渡った空を見上げて大きく両手を広げて伸びをしていた。
「光がいてくれて嬉しかった。…僕は、ずっと絶望の中にいたからね。祖母さんから光のことを聞いて、僕は絶望から救われて今まで生きて来れたんだ。…本当にありがとう…光」
夜刀は、そう言うと私をしばらく見つめてから優しく抱きしめていた。
そして…ポケットから、黒猫のお守りを取り出して私の手を取って渡した。
「コイツは、何時でも光のことを守ってくれるから、これからも持っていて欲しい」
「うん。……ありがとう」
「これからも…ずっと僕は、光を見守っているからね」
夜刀は、黒猫の夜刀の真似をした後…もう一度、少し強めにギュッと私を抱きしめていた。
そして、結婚式が無事に終わってしばらくすると…夜刀は、誰にも何も言わずに何処かへ旅立って行ってしまった。
【End】
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