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「あたし達、一緒にいない方がいいのかもしれないね」
思い出の橋の上で、隣の彼女が不意に呟く。
僕はなんとなくその理由が分かっていたけれど、その事実を認めたくなくて、「どうして?」と敢えて尋ねた。
彼女は切ない笑顔で、答える。
「一緒にいても、お互いに傷つけ合うだけだから。あたし、もう傷つきたくないし、君のこと、これ以上傷つけたくないの」
僕は何も言えず、俯いた。
彼女の言いたいことは、よく分かる。
最近はすれ違いばっかりで、ケンカも増えた。口を開けばケンカ、なんてことも頻繁で、でも本当は互いにケンカなんてしたくないから、自然と二人の会話が減っていた。
昔は、ケンカなんてしなかったのに。
そう考えて、僕は小さく首を振る。
僕と彼女の関係は、傷の慰め合いから始まったもの。昔、ケンカをしなかったのは当然のことだ。互いにボロボロになるまで傷ついて、互いにその傷を癒し合っていたのだから。
「君は君で、幸せになってね」
彼女のその声に、僕は顔を上げる。彼女は今にも泣き出しそうな顔で笑っていた。
互いの傷を埋め合う関係だったのに、互いに傷を癒したはずなのに、どうして僕達は傷つけ合っているのだろう。彼女の、こんな顔が見たいわけじゃない。
結局、恋は人を傷つけるだけなのか。幸せ以上に痛みが伴うものなのか。
僕は彼女の言葉に、否、自分の中に生まれた疑問を否定するために、首を横に振った。
一人で幸せになったって仕方ない。君とじゃなきゃ、ダメなんだ。
「約束したじゃん。二人で幸せになろうって。僕一人で幸せになっても意味ないんだよ」
僕の言葉に、今度は彼女が首を横に振る。
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