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拒絶されることが怖いんだ。好きだから。好きな人に拒絶されるなんて絶望しかないと思う。それならば思いにそっと蓋をして先輩、後輩という関係でいれば先輩のそばにいることが出来る。それでも時々言葉にならない思いが溢れてしまうことがある。今夜がそうだった。だから俺は酒に逃げた。想いに蓋をして「恋愛感情などありませんよ。当然でしょう?」という態度を続けることが、時々とてもつらくなる。それでも言えないから俺は酒に逃げた。チラチラと先輩を横目で何度も見ながら大した言葉もかけられないうちにサークルの飲み会はお開きとなった。
「じゃあ、また」
「はい。先輩、気を付けて帰ってください。あ。先輩、俺、中上といいます」
「知ってるよ」
「あ。知っててくれたんですか。よかったです。それじゃあ、また」
帰り際、先輩の方から声をかけてくれた、こんな些細な言葉がうれしい。大勢いるサークルメンバーの中に俺がいるということをきちんと認識してくれていただけでうれしかった。
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