君は君で、俺は俺で

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 丑三つ時も過ぎた頃。始発が動くまであと一時間程度だろうか。そんなタイミングで君は聞いてきた。俺は君がオーダーしてくれた冷たいウーロン茶をゆっくりと飲んだ。  「何もないよ。何もないほうが幸せな時とそうでない時があるんだ」  「そう。じゃあ今日は何もないことが幸せだと思えなかったのね。だからお酒に逃げたのね」  「ああ。そうさ。君はどうだ? 今、幸せなのか?」  「幸せではないよ。けど自分で決めたことだから」  「君は幸せになりたくないのか?」  そこまで言うと君は茶化すように笑い出した。  「ちょっとなぁに? ゲロの次は私に絡んでくるってわけですか?」  高校時代からの付き合いだというのにわざと敬語を使っていることに茶化し度が増しているのがわかった。  「茶化してごまかすということは、言いたくないということだな」  君は黙り込んだ。けれど特に悲しそうな顔はしていなかった。  「幸せってさ、なんだろうね」  君に問いかけらえた言葉に俺は答えられない。先に俺が君に問いかけておきながら、自分だって何も答えを持っていなかった。俺は君に答えを教えてもらいたかったのだろう。甘えていたのだろう。今も俺が好きなのか、もう冷めているのか分からないけれど、とりあえずいつも俺のそばにいてくれる君に。
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