君は君で、俺は俺で

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 「始発にはまだ少し早いけどさ、そろそろ出ようか?」  「え。始発まだ動いていないのに店出てどうするんだよ?」  「ちょっと行きたいところがあるんだ」  まだ九月。残暑だというのに酒は体を冷やす飲み物だから、店を出た俺は少し寒いと思った。無意識のうちに両腕を組み、君の少し後ろを歩いた。君は一度振り返ると立ち止まり、俺が君の隣に来るのを待ってからまた歩き始めた。酔い覚ましには良い散歩だったかもしれない。君はいつの間にか、とある橋に俺を連れてきていた。  「ここから見える朝日がね、キレイなんだよ。見たほうがいいよ」  「そう」  散々飲んでゲロを吐いた俺は疲れていた。だから君への返事も必要最低限なものしか出てこなかった。橋の手すりに両腕を預けて俺はそこに顎を乗せ、真っ黒でなくなった空を見て、真下に流れる川の水を眺めた。君は俺の方に体を向けて片手だけ橋の手すりに掴まっていた。  「好きだよ。あなたのこと。ずっと好きだった」  「゛だった“ じゃあもう好きじゃないってことでいい?」  「ううん。今でもあなたが好き」  「どうして今頃、そんなこと言うんだよ。お前、高校の時から俺のこと好きだっただろう? どうしてその時言わなかったんだよ」  「あ。やっぱり。気づいてたんだね。気づいてたのにずっと友達してくれてたんだね。それって脈ナシってことだよね?」  君は知っているはずだ。  だからこの質問は確認なんだ。俺自身、戸惑っている感情への確認なんだ。
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