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「高校の時、告白してくれてたら俺はお前と付き合ってた」
「そう」
「けどもう無理だ」
「だよね」
「俺自身、自分がどうなっちゃってるんだか、全然わからないんだよ。ただ。好きだと思う。藍沢先輩のこと。これは恋愛感情だ。俺はどうかしている」
藍沢先輩は男だ。
男に恋愛感情を持つなんて初めてのことだった。俺の中の何かが狂ったとしか思えない。今まで生きてきた二十年で男を恋愛感情で好きだと思ったことなどなかった。それがなぜ?
自分でも分からない。分からない感情をどうしていいか更に分からないから、ただ見ていることしか出来ない。
「ねぇ、ハグしてくれないかな?」
「え」
「さっき“お前は幸せなのか?“ と聞いたよね? 少なくとも今あなたがハグしてくれたら私、幸せ。だってずーっと夢見てたことだから」
「お前のこと、好きじゃない奴にハグされて幸せなのかよ」
「幸せだよ。だって私はあなたが好きだから。それに」
「それに?」
「あなたにハグされたら、あぁ、この人は私のこと、恋愛対象として見てないんだなって実感できると思うんだ」
「そういうもん?」
「少なくとも私はそう思ってる」
「俺、お前のこと恋愛対象としてはもう見られないけど友達としては好きだよ」
「じゃあこれからも友達でいよう?」
「それで……、いいのかよ?」
「うん。私もきっと、そのうち、また別に好きな人出来るよ」
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