第四章 その二

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 よく晴れた、あたたかな昼下がり。源次郎は貴之とともに庭に出て、ほころび始めた桜を眺めていた。風が心地いい。 「由貴に使いをやった」  陽射しに目を細め、唐突に貴之が言う。 「さようでござりますか」  貴之は機嫌よくうなずき、そばに置かれている縁台に腰を下ろす。そこにちょうどよく藤尾が茶を持ってきた。 「この桜も、うれしかろうなあ」  早速藤尾が持ってきた湯のみを手にしながら、つぶやく貴之。 「出番は、春だけでござりますからね」 「確かにな。花が散れば葉に虫がついて嫌われる」  屈託なく笑う貴之の横顔を、源次郎はうれしく眺めた。  とうとう、春が来た。由貴になんと言ってやったのか、貴之は言わない。それでも、貴之が誰にとってもいいように取り計らうだろうことは、疑いなかった。  もうしばらくすれば、桜も見ごろになる。 「花見を楽しみにしておれよ」  源次郎の心を見透かしたように、貴之が笑った。二人の頭上で、空は気持ちよさげに晴れ渡っている。
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