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「本当に見事な桜でござりますね」
「樹齢五十年を下らぬと聞いた。毎年毎年、厳しい冬を越してこうして花を咲かせてきたのだな」
源次郎にちらりと目をやる貴之の横顔。花あかりにまばゆく輝き、笑顔がいっそう明るく見える。
「我らもこうあろうな」
貴之が小さくつぶやく。視線を交わし、なんとなく互いに照れて、二人は同時にあらぬ方を向いた。
春が、来た。
何度味わっても飽きることのない清々しい幸せ。かみしめながら、源次郎は貴之の背中をいとおしく眺めた。
了
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