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「っ……ん」
抱き合って、キスをする。
軽く、何度か、これからする事の確認の様に。
その合間に、壮介を見る。千都香の髪や頬を撫でながら、切なそうに微笑んでくれる。まるで恋人同士の様な仕草だ。くすぐったさに、千都香は笑う。
立っていると背の高さが違うので、こんな風に同じ目線の高さで見つめたり、表情を見たりする事は難しい。それが出来る事も、嬉しい。
「ふふっ……あ、ゃん……」
「何笑ってんだ?」
壮介の手と唇が、体に下りた。首筋や肩に口づけ胸にやわやわと触れながら、壮介は千都香を見て訝しげな顔をする。
「先生の目を見れるのが、嬉しいの。」
「……変な女だな」
「うふふ……っん、ぁ、」
「ここで、残念なお知らせだ。」
千都香が、あまりにもご機嫌だったからだろうか。壮介は妙な予告を口にした。
「今から、俺は見えなくなる」
「え?……あ!」
壮介が布団の中に消えた。
……と思った瞬間、柔らかな濡れた物に胸をべろりと撫でられて、先端がくちゅんと何かに包まれた。
「はぅ……あっ、あ、ん!」
そこからは、ひたすら気持ち良い場所を暴かれた。
今までに経験した事のある、どれとも違う。
痛いだけでも、身勝手なだけでも無かった。
千都香の欲に点々と火を灯す様に、触れて焦らして、堪えられなくなった頃、欲しがった以上に与えられる。
声が、止められない。気持ち良い。気持ち良い──何をされて居るのか分からなくなるほど、気持ちいい──そう思った時、背中にぞくりと冷たいものが流れた。
「先生っ!先生、先生!」
「……んだよ」
必死で呼ぶと、壮介が煩わしそうに戻って来た。
「っ先生っ……」
せっかく壮介が見れたというのに、涙がぼろぼろ零れて視界がにじむ。千都香は壮介にぎゅっと抱き付いた。
「どうかしたのか?痛かったか?」
「ううんっ」
壮介が、抱き返してくれる。髪を撫でられて、千都香はいっそう強く抱き付く。
──これは、夢じゃない。他の誰かでもない。千都香は壮介に抱かれているのだと、確かめる様に。
「嫌なことしたか?」
「ううんっ……気持ちいいっ……」
一生懸命、首を振る。痛い事も、嫌な事も、されていない。ただ、不安になったのだ。
「じゃあ、何で泣いてんだ?」
怒りもせずに頬を撫でて口づけながら、泣いた子をあやす様に優しく聞いてくれる。
「見えないの、やですっ……」
「え?」
「お布団、取っちゃって欲しい……」
「……寒いだろ。」
「寒くないです。くっついてるし、さっきから、すごく熱いの……きゃ?!」
壮介が、無言でがばっと布団を跳ねた。
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